天然酵母「種」の掛け継ぎ

「種のかけ継ぎ」により良い種を継続して使う

天然酵母の種作りには、手間と時間がかかります。それだけに、パンを焼くごとに種から作り直すよりは、良い種をできるだけ継続して使った方が良いでしょう。それがパンの味のバラつきを防ぐことにもつながります。

酵母は菌類の中でも比較的丈夫で、適した温度と水分を守ればどんどん増えます。そこで、一度培養に成功した天然酵母の一部に、同種の原料(小麦粉、ライ麦粉など)と水を加え、適正な温度管理を行って再び増殖させます。これを繰り返せば、同一の種を使い続けることができるのです。これを「種のかけ継ぎ」といいます。

サワー種や中国の「老麺(ラオミェン)」は、この方法で種をつなぎながら利用されています。

しかしそれでも時間が経つにつれて、酵母の活性力は弱まり、また改めて種を作らなければならなくなることがあります。これを防ぐため、補助的に活性力の強い市販の酵母を利用したり、デンプンや糖などを加えて天然酵母の活性力を持続するなどの方法がとられます。どの段階で活性力が弱まるかは、酵母の種類や育成環境によって異なるので、経験的に判断するしかないようです。

酵母を一時休眠させるには

微生物は等比級数的に増殖します。そのため増殖が進みすぎると栄養となる糖分を食べつくしてしまったり、酵母自身が作り出した有機酸などが原因になって死滅してしまうこともあります。そこでこのような場合には、活性力を一時休眠させる方法をとります。

ひとつは、40度以下でゆっくりと丁寧に乾燥させる方法。水分が失われると酵母は休眠して、保存が利きます。もうひとつは、雑菌が混入しないように密閉して、マイナス20度以下で冷凍する方法です。

いずれもその過程で多少の酵母が死んでしまいますが、改めて適度な温度と水分のもとに置けば、再び活性化を始めます。冷凍したものが再び活性化するには時間がかかりますが、冷凍している一定期間は保存することが可能になります。

以上のように、天然酵母の培養や発酵、そして扱い方は、非常に手間と時間のかかるものです。こうした作業を効率的に行い、確実性を高めるために、最近では「フェルメント」と呼ばれる天然酵母発酵機が開発されるようになり、パン屋でも導入される店も増えてきています。

また酵母自体では、ホシノ天然酵母などに代表される市販の天然酵母は、天然酵母のよさを残しながら、一定条件を守れば発行の失敗は少ないようです。初めて天然酵母のパン作りに挑戦する方には大変便利ですね。