天然酵母の元種作り

元種作り

パン作りにおける発酵とは、酵母がブドウ糖を分解しながら増殖して、その結果として炭酸ガスとアルコールが作り出されるということです。ということは、使用するパン用酵母はその種類が何であれブドウ糖が分解できれば発酵はうまくいくということです。

したがってそのためには、酵母作りのまず最初に、酵母とブドウ糖を引き合わせなくてはなりません。これが元種づくりです。この元種は、初種液種などと呼ばれることもありますが、ここでは元種で統一します。

元種づくりの段階で酵母とブドウ糖が出会っても、そのまま酵母がブドウ糖を分解して増殖していかなければ、発酵は失敗です。そこで、酵母がブドウ糖と出会った時に十分に能力を発揮してブドウ糖を分解できるような環境作りが必要になってきます。

天然酵母は単一酵母(イースト)よりも発酵力が弱く、不安定です。このため、パン種として使えるようにするためには、酵母自体を増やして十分な活性力を持った強い菌作りをしなければなりません。

このため、天然酵母を使ったパン作りには、イーストなどと比べると時間が非常に長くかかるのが一般的なのです。そしてその間も注意を払い、適度な温度と水分を保つようにすることも重要です。前述のように、酵母はどれをとっても個性があり、作るたびに出来不出来があります。このため常に活性状態を見ながら温度管理や水分補給を心掛けることが必要になります。

最も容易な方法は、砂糖を補助的に加えることです。前述のように、酵母はブドウ糖を栄養源として増殖して活性化していきます。そして砂糖の成分の99.9%はブドウ糖に分解されやすいショ糖なのです。また、砂糖では最終的な風味やコクに強さが出ないと考えるところでは、蜂蜜を使う場合もあります。蜂蜜はブドウ糖と果糖が主成分であるため、砂糖のようにショ糖をブドウ糖に分解する段階がなく、酵母は直接そのまま栄養として利用することができます。さらに、蜂蜜の種類によってさまざまな風味があり、それを味の微妙な違いとして表現することもできるという利点もあります。

しかし、元々の素材の味、つまり小麦粉やライ麦粉などの粉そのもののうまみを活かすのなら、酵母を加える前に、粉と水を練り合わせておく方法をとるとよいでしょう。小麦粉の中に自然に含まれる麹菌などに小麦粉のデンプンを分解させ、糖化させておきます。糖化が十分であれば、それを栄養源として酵母は盛んに増殖することができます。

また果実種を作る場合も同様で、果実をよく潰し、表皮についた酵母と果実に含まれる果糖とを十分に馴染ませておくと良いでしょう。そのポイントとなるのが、温度と水分です。酵母が最も活発になるのは、温度でいうと25〜35度の間で、水分活性が0.87以上の時です。

水分活性とは食品中に含まれる全水分のうち、微生物が利用できる水分が占める割合を数値化したものです。カビの例でわかるように、微生物は水分が多いところで活発になります。酵母もカビなどと同じ微生物なので、水分が多いところを好んでいます。